- ITS(高度道路交通システム)へのワイヤレス応用による安全運転システムの実現
出会い頭の衝突事故に代表される交通事故、このような事故を防ぐ安全システムの実現のためには、自動車間相互の情報交換に基づく他車認識が必要になる。現在のカーナビ(GPS)は自車の位置を正確に知ることができるが、他車の位置を認識できない。交差点のビル影の車にはレーダーも役立たない。
この研究では、高信頼な車間ワイヤレスネットワークシステムを構築し、上記の問題を解決する。安心・安全の車社会を実現する。
(自動車メーカー系研究所と共同研究を開始)
- 多次元空間の極限活用インターコネクション技術(新世代移動通信技術)
ワイヤレス伝送は、情報の送り手と受け手がともに複数で同一空間を共有する多対多のインターコネクション(=お互いを結び付ける)の技術である。その基本である1対1のコネクションにおいても電波の通り道は反射や散乱によって複数に分岐し、これによって生じる伝搬劣化現象(マルチパスフェージングと呼ばれる)があるため、ワイヤレスチャンネル、特に、移動通信チャネルは非常に複雑なものとなっている。これに同じ周波数の電波が使われることによる干渉問題が加わるため、移動通信の伝送技術の研究は全てこの伝搬劣化と干渉克服のためといっても過言ではない。多次元空間(場所的空間・時間・周波数・偏波など)に現れる劣化要因を、多様性を生み出すプラス要因と捕らえて、多次元空間の極限活用インターコネクション(MIMO情報伝送の発展型)の研究を行う。この技術が活かされることにより、将来の携帯電話(情報端末)では、精細映像(映画等)がリアルタイムで見られる。
- 大容量蓄積型信号処理システム(新しい時代のソフトウェア無線技術)
ハードディスク装置(HDD)の大容量化が進み、将来においては十〜百テラバイト、あるいはそれを超えるメモリの利用を期待してよいだろう。このような時代になれば、空間に飛び交う電波環境そのままを大容量メモリ(HDD)に蓄積し、信号処理を施して加工したデータベースを利用する大容量蓄積型信号処理システムにその活躍の場が出てこよう。演算速度も高速化が期待できるので、これを前提とした蓄積型であってかつ準リアルタイム信号処理アルゴリズムの研究を行う。
信号処理を川から魚をとる例にたとえると、これまでの信号処理は、川に行って魚を傷つけないように釣り上げる技術、提案する技術は、川のまま丸ごと囲い込んでしまう技術。例えば、テレビであれば、テレビの入り口に電波のプール(電波環境丸撮りのトータルレコーダ)をつくり、今と過去をリモコンで自由に操作して、(例えば過去の一週間)いつも「今」の感覚で視聴できるタイムマシンテレビを実現することができる。
- シームレスポジショニングシステム(グローバルからローカルまで、居所をぴたりと推定)
ポジショニングシステムの1つであるGPSによってカーナビが可能になり、わが国では幅広く普及した。このようなナビゲーションサービスの歩行者への適用や、位置情報をもとにした各種情報サービスの提供は今後大きく発展する可能性がある。そのときにネックとなるのが屋内系の位置検出である。屋内ではGPSの利用が困難なため、代替技術が必要である。
各種屋内用ポジショニング技術をサーベイすると共に、Bluetooth、無線タグ、アドホックネットワーク等を応用した方式を検討している。また、それらとGPSを併用することで、屋内外シームレスな測位環境の構築を目指している。
- UWB用RFフロントエンドモジュールの開発
ハイビジョン動画伝送の需要増大などここ数年の内に、現在の短距離無線接続(54Mbps)の10倍から100倍のデータ伝送速度の無線システムが必要となる。UWB(Ultra
Wide Band)システムはその有力な候補であるが、マイクロ波で2オクターブ以上の帯域を実現できるアンテナ、フィルタ、バランが必要である。本学では平面小型構成自己補対アンテナならびにこのアンテナの駆動系に必要な平衡モード帯域通過ノッチフィルタ、アクティブバラン、MMIC増幅器の開発を進めているが、これらを一体モジュール化しシステムを具現化することが必要である。
- 複雑系ワイヤレスシステムの設計・解析技術(高度な通信システムの設計と実現)
これまでのワイヤレス通信チャネルは電波伝搬の性質に基づいて、線形システムで取り扱われている(線形システム送信電波を強くすれば、受信信号にもそれに比例して強く受かるような、入力と出力が比例関係になるシステム)。しかし実際には、送受信装置や中継器、トラフィックやネットワークなどに非線形の現象が混入していて、トータルとしての動作がカオス的様相を呈する場合がある。これまで、避けるべき要因であった非線形現象(言い換えれば複雑系動作)を積極的に取り入れて高度な通信システムを実現したり設計ができる手法の研究を行う。(積極的な利用という意味では、まだ具体例はないが、将来の伝送システム設計には有力な手段)このためには従来行われていなかった、磁界を考慮した半導体デバイスシミュレーションさらにはシュレーディンガー方程式を考慮した無線デバイス解析技術の確立が必要である。さらにこれらの結果を非線形モデリングする手法も新たに開発する必要がある。
- 大規模センサーネットワークへのワイヤレス応用
これからの情報伝送システムとしてユビキタスネットワークが指向されている。これは、多数のセンサーからの情報を混信なく読み取り、システムを自律的に制御する働きを持つ。例えば各家庭のガスメータや電気メータを自律的に結合するネットワーク。現在ガスの検針は各ガスメータがPHSインタフェースをもって集中局に通知するという方法をとっている。しかし、より柔軟なネットワーク構築のためには、各メータが通信機能を持ち、近隣のメータと通信しアドホックネットワーク(端末が自分の情報を送受信だけでなく、他端末の情報をリレーする形で伝送する相互協力システム)を作るという方法がある。しかし、東京23区を考えただけでも、1000万に近い端末が存在するわけで、IPアドレスをどう割り当てるか、ルーチング情報をどう交換するかなどのネットワーク構築の課題が出てくる。
さらにそのようなメータを基地局にできれば、近くにいる移動端末に対して、電話やデータ通信の通信サービスが提供可能となると思われる。このような新たなメトロポリタンネットワークの構築方式も1つの研究テーマになる。
- 極微体間通信技術
マイクロマシーン・MEMSに代表される極微体稼動装置が集団で行動し、全体としてあるひとつの機能を実現するようなシステムが今後種々出てくるであろう。そのような極微体装置間の情報交換やエネルギー供給の仕組みが求められるため、この技術を研究する。折角小型に作ったマイクロマシーンがフル装備の通信機能を具備することによって、その重さや消費電力で動けなくなってしまうことの無いような構成や機能の提案を行う。
また、パソコンやコピー機などの情報家電では、ボード間の配線が複雑になり、小型化のネックになっている。近距離ワイヤレスインターコネクション技術でこれを解決する。言うは優しいが簡単ではない。