プロジェクト概要 (Objectives)
取り組み概要
本学の大学院教育では、“国際性と実践力”に優れた高度専門技術者・研究者の育成を目指しており、
特にICT(情報通信)分野では国際化が顕著であり、
国際的にリーダシップを発揮できる技術者・研究者を育成するための教育プログラムを必要としている。
この目的に向けて、学生が身をもって海外の学生と協力して課題解決に取り組むことにより、
体験的に国際性と実践力を身に付けることを目的とする「国際プロジェクト科目群」を新たに開発する。
この取組は、大学院博士前期課程学生を対象とし、
本学と北京郵電大および韓国・情報通信大が今まで実施してきた連携活動をベースとして、
3大学の学生が混成チームを形成してICT分野の課題解決を行うものである。
授業形態は、サマースクール形式の集合授業および各大学での分散授業を併用するPBL(Project Based Learning)とする。
取組の特色
この取組は、本学の提案で3年前に始めたICT分野の日中韓3大学
(電通大、北京郵電大、韓国・情報通信大)の教員および学生の交流事業を母体としている。
この交流事業では、教員・大学院博士後期課程学生を対象とした学術発表と、
同時に3大学の大学院博士前期課程学生を主体とした交流プログラムを足かけ4日程度の日程で行ってきた。
また、教員によるICT分野の教育連携および教育内容について議論をしてきた。
開発する「国際プロジェクト科目群」は、これらの実績を発展させて、
ICTに関する課題解決プロジェクト教育を行うものであり2単位(90時間)の科目として実施する。
その実施形態は、前期と後期の2回に分けたサマースクール形式の集合授業と、
それらを結ぶ期間に実施する分散授業を併用するもので、いわば“国際PBL”と称する様な授業とする。
国際PBLでは、3大学からの学生が混成チームを形成して、与えられたICTに関する課題の解決に取り組む。
このような「国際プロジェクト科目群」を、本年度に3大学の教員が協力して開発し、試行を経て来年度から本実施する。
日本と海外の2大学間での国際教育については先行事例があるが、
3カ国・3大学間で学生が混成チームを形成して一つの課題に取り組むタイプの国際プロジェクト教育は新しい形態である。
この「国際プロジェクト科目群」では、学生達は日中韓の文化、行動様式、
コミュニケーション様式の差異や共通点を体験的に学ぶことになり、
国際性と実践的能力を一層効果的に育成すること、
さらに日中韓の学生達の将来にわたる深い交流の機会を提供することを特色とする。
本プログラムとの整合性
- 同期・背景
本学は、ICTおよびその関連分野に特化した大学であり、
ICT分野で国際的にリーダシップを取れるような人材を輩出し続けることが本学の使命である。
そのような観点で、台頭する中国、韓国との連携を深め、本学の国際的活力を高めることを意図して、
それぞれの国で本学と同様の立場にある北京郵電大および韓国・情報通信大との間で国際交流活動を実施することに3年前に合意した。
そして、1回目の連携活動を平成18年8月に、
企業の協力も得て電通大でフォーラムを開催した。
2回目を昨年9月に、北京郵電大にて開催した。
その時に、今後3大学が連携して新たな教育プログラム開発を進めることが合意され、具体的な内容を検討してきた。
- 検討実績
対象とする3大学間での取組は、平成18年から開催してきた学生交流プログラムを発展させるものである。
ただし、過去2回のプログラムは期間が4日程度であり単位認定の対象外であった。
一方、この取組はPBL授業を取り入れるが、
PBL授業そのものは本学において学部3年の授業科目として企業関係者の協力を得て昨年度より実施している実績があり、
この経験を大学院レベルのPBLへ活かすことが出来る。
なお、昨年北京郵電大で開催した学生交流プログラムでは、プログラムそのものを全て学生達が企画・運営しており、
この国際的共同作業の実績を踏まえて「国際プロジェクト科目群」の企画を検討している。
- 大学の教育理念・目標との関連
本学の教育理念は“高度コミュニケーション社会に貢献する国際性と実践力に優れた技術者・研究者の育成”であり、
本学のコアとなるICT分野において国際的に先進性を発揮していくことが重要な目標である。
この観点で「国際プロジェクト科目群」の取組は、先導的に開発していくべき本学の目標に沿う取組である。
- 大学教育国際化への効果
本学は、ICTとその関連分野に特化した大学として特色を有している。
この取組は、本学と同様の特色を持ち、
中国と韓国をそれぞれ代表する北京郵電大および韓国・情報通信大との間での連携活動をベースにして開発するものである。
日本の大学として、台頭する中国、韓国のICT分野の拠点大学と連携し、かつイニシアティブを取っていくことは、
我が国の大学教育の国際化と産業競争力の強化のために重要なことと認識している。
本学の大学院への進学率は60%程度に達しており、今後さらに進学率が上昇する傾向にあること、
博士前期課程を修了して就職する学生が大半であることを考慮すると、
大学院博士前期課程における国際教育プログラム開発が急がれる。
また、電気通信学研究科において、英語での授業科目を履修条件にしている「ICT国際プログラム」を実施しているが、
このプログラムと「国際プロジェクト科目群」は相まって本学の大学院教育国際化への効果を高める効果をもつ。
さらに、これらの経験を生かして学部教育の国際化を効果的に進めていく予定である。
- 実施体制と構成員の役割
この取組は、本学の大学院教育の国際化を推進する大学教育センター、
国際交流を推進する国際交流推進センターにおける全学方針の下で、
「ICT国際プロジェクト科目企画委員会」が中心となって取組の企画、実施計画の検討を行っている。
この企画委員会には、「ICTトライアングルフォーラム実行委員会(全学委員で構成)」の関係者、
PBL授業経験者、協力を得る企業関係者が構成員として参画している。
実施段階に入った段階で、企画委員会を「ICT国際プロジェクト科目運営委員会」に切り替え、
継続的な運営に当たる予定である。
また、北京郵電大、韓国・情報通信大とは、
3大学の副学長クラスがCo-Chairを務めるICT Triangle Forumの傘下にICT International PBL Committeeを設けることにしており、
授業の実施方法、成績評価方法、単位認定制度などについて検討する予定である。
期待される社会的効果
ICT分野では、我が国の先導性を維持・発展させていくために、
標準化などの国際活動においてリーダシップを発揮できる技術者・研究者の育成が産業界から強く求められている。
このような人材育成には、大学院在学中から国際的な実践的活動の経験を積むと共に、
同世代の海外の知己を持つ機会を増すことが非常に重要である。
「国際プロジェクト科目群」は、このような社会からの期待に沿う教育効果を発揮することが狙いであり、
グローバル化した我が国のICT分野の研究開発力の維持・発展に貢献するものである。
評価体制
本学の教育プログラムに対する評価体制は、授業そのものへの評価と教育の成果に対する評価に大別出来る。
授業そのものへの評価については、
非常に少人数の特殊な授業科目を除いて全ての授業に適用されている「学生による授業評価」による。
また、新規の教育施策については大学教育センター教育改善部による評価および改善検討がなされる。
一方、教育の成果に関する評価は、評価室において総合的な観点から自己点検評価が行われる。
「国際プロジェクト科目群」は上記に従って評価されると共に、国際交流の効果の観点から、
国際交流推進センター国際企画部門による評価がなされる。
連携する海外大学について
北京郵電大学(中国)
ICT分野に特化した大学として中国の国家重点大学の1つとなっている。
ICT分野に関する限り、清華大や上海交通大と同等の高水準の教育を行っている。
特に、学生の語学力は優れており、英国の有力大学とのデュアルディグリーなどを実施している。
情報通信大学(韓国)
設立されて10年程度の大学であるが、
韓国政府がICT分野で国際的に活躍する少数精鋭の人材育成を目的に設置した大学であり、
全ての授業を英語で実施するなど、国際的に通用する高い水準の教育を行っている。
日本経団連の情報通信人材育成部会が、昨年末にIT人材育成機関設置の提言を政府に行ったときのモデルとなった大学である。