「ICT国際プロジェクト教育科目の開発」
  -体験的に国際性と実践力を身に付けることを目的とする国際プロジェクト型授業の開発-
実施計画 (Schemes)

国際プロジェクト科目群の概要

 ICT分野では、国際的にリーダシップを発揮できる技術者・研究者を育成するための教育プログラムを必要としている。
この目的に向けて、この取組では学生が身をもって海外の学生と協力して課題解決に取り組むことによって、 体験的に国際性と実践力を身に付ける国際プロジェクト教育である「国際プロジェクト科目群」を新たに開発する。


国際プロジェクト科目群の内容

 「国際プロジェクト科目群」として、 ICT分野の主要な技術の中でPBLによる技術修得が適している次の3つの技術を取り上げる。
それぞれの技術部門で明確な目標を定めて教育内容を検討し、国際プロジェクト科目を開発する。
  • 信号処理部門 (ディジタル信号処理 (DSP)によるマルティメディア情報等の処理技術の修得)
  • ネットワーク部門 (ワイヤレスネットワーク機材による高速・高信頼ルーティング等の技術修得)
  • セキュリティ部門 (暗号、認証などのセキュリティに関するアルゴリズム技術の修得)
 いずれの部門においても、予め3大学において基礎科目の履修を終えている学生を対象とし、 この科目群ではそれぞれの部門の専門知識の学習を行うと共に、 PBLテーマに対して学生グループによる課題解決のコンペティションを行う。
学生グループは3大学の混成チームとし、英語によるディスカッションや共同作業によって課題解決を行う。
これにより、ICT技術の基礎知識を確実に修得し実践的な能力へ高めると共に、 国際的なチームワーク力やコミュニケーション力を修得することのできる授業とする。
 この取組は、本学の海外協定校である中国・北京郵電大、韓国・情報通信大とともに、 集合授業の開催地がいずれの大学であっても、 3大学が連携する単位互換科目として2単位(90時間)を付与する正規授業を計画している。
科目履修期間を通して、 各大学において45時間相当の講義と実習、集合授業において45時間相当(6日間)の講義と実習を行う予定である。
具体的な実施内容は、3大学によるICT International PBL Committeeにおいて、 単位認定の仕組み、実施時期、講義と実習などの詳細検討を行う予定である。現段階では、 以下のような年間計画で進めていく予定である。


授業実施スケジュール

  • 7月上旬:当該年度のプロジェクトテーマ決定、参加学生とグループ決定
  • 7月中旬~8月中旬:各大学において、各科目の基礎知識の講義(15時間相当、必要に応じて遠隔講義を活用)
  • 8月中旬~下旬:〔集合授業〕PBLで用いるハードウェア、ソフトウェアを理解するための専門知識の講義、 およびグループ別にプロジェクトテーマの課題解決方法の検討、 役割分担決定等を行い、一部実作業を開始(3日間程度、22.5時間相当)
  • 9月~11月中旬: 〔分散授業〕ソフトウェアプログラム作成等をインターネットにより情報を共有しながら遠隔共同作業(30時間相当)
  • 11月下旬:〔集合授業〕プロジェクトテーマの仕上げ、 デモおよび成果発表の準備、プロジェクト成果発表会、および各チーム・学生の評価(3日間程度、22.5時間相当)
  • 年間2回の集合授業を行い、それらを別の国の大学で行うことで、 参加学生は少なくとも1回は他大学を訪問することになり、海外文化を学ぶ機会を確保する。


国際PBLの学生グループ構成

 第一回目である平成21年度は10グループ程度とし、各大学より10名程度が参加して、 各グループ共3大学の学生で構成する。
次年度以降は希望者数、テーマ数等を勘案して更なる充実化を図っていく。
本学からの参加者は日本人および留学生を想定しているが、 留学生の比率がグループ内で高くなりすぎないように日本人学生がグループに1名以上入るように調整を行う。


実習に必要な機材

  • 汎用PC:ディジタル信号処理計算、ネットワーク制御、セキュリティアルゴリズム計算、等に使用
  • ディジタル信号処理ボード:TI社製DSP(Digital Signal Processor)スタータキット
  • 無線ネットワーク開発キット:Sun SPOT Java Development Kit
  • ソフトウェア:必要に応じて科学技術計算ソフト、CADソフト、等を使用


ICT国際プロジェクト科目群の実施体制

本学主担当:
本教育担当および海外連携担当として特任教員を配置、プロジェクト内容の決定、 課題選定から運営までを責任を持って運営できる体制を整える。
学内連携体制:
ICT国際プロジェクトの実施に関しては、国際交流推進センター長が統括すると共に、 連携大学との窓口を務める。実際の授業の実施は、 ICT関連の専攻が多い電気通信学研究科の教員および先端ワイヤレスコミュニケーション研究センターの教員が担うことで、 継続的かつ確実な授業実施を行う。
連携大学との役割分担:
各大学の学生に対する基礎知識の講義および、共同実習および成果発表会などの開催に関して、 3大学で年度毎に分担を協議し準備・運営を行う。


遠隔実習環境の構成

 この国際PBLでは、集合講義、集合実習および成果発表に関してのみグループメンバーが顔を合わせるが、 実習作業の多くは各大学で実施する。
この間の遠隔共同作業は、インターネットによる共通プラットフォーム上で行えるよう、 情報共有が可能な環境を用意する。
インターネットを通じてのディスカッションやプログラムの交換を行うことで、 遠隔コミュニケーションと直接コミュニケーションを融合した教育を行う。
 また、必要に応じて遠隔教育の実施も検討する。


国際プロジェクト教育の全体計画

平成20年度:
本支援経費を利用して、ICT国際プロジェクト科目群の実施方法、授業内容などについての連携大学との協議、 PBLの実施に必要な機材の準備等を行う。 また、少人数学生による試行、大学院カリキュラムとしての学内認定などを行う。 これらの企画・計画などを集中的に行うために、専任の客員教員を任用する。
平成21年度:
単位を付与する本実施とする。 3大学が回り持ちで開催するICTトライアングルフォーラム(場所:電気通信大学)に合わせて集合授業を実施、 後半の集合授業および成果発表会は韓国もしくは北京での開催を予定する。
平成22年度以降:
集合授業および成果発表会を3大学で輪番制として実施し、 前年度の国際プロジェクト科目履修生の優秀者には次年度の指導的役割を与えることで教育効果が得られる運営を行う。


現在までに取り組んできた内容

 北京郵電大および韓国・情報通信大との連携活動は、 平成17年10月16~18日に開催された北京郵電大50周年行事の機会に、 本学から3大学の学術交流および学生交流を提案して同意が得られ、ICT Triangle Forumと命名して開始することになった。
 ICT Triangle Forumの第1回は本学にて平成18年8月6~11日に開催し、 第2回は北京郵電大で平成19年9月17~21日開催された。
また第3回は韓国・情報通信大にて平成20年10月6~9日開催された。
2回目には、本学から国際化に有効なICT分野の教育連携について提案し、 検討を開始することの同意がえられた。
また、3回目の韓国・情報通信大で開催されたICT Triangle Forumでは、 本学よりI国際プロジェクトを提案し各大学の参画を求めた。


平成20年度本支援で実施する開発計画

8月または9月:
本年度の3大学連携ICT Triangle Forum(韓国開催)にて本実施計画の詳細検討。
(本支援による旅費を用いて担当教員による打ち合わせ実施)
9月~12月:
国際プロジェクト科目群の内容の検証、試行実施のための課題選定、 および本支援で雇用する客員教員によって各科目用のハードウェア、ソフトウェアを準備する。
1月~3月上旬:
少人数学生によるPBLの試行、特に3大学の学生のソフトウェア、ハードウェアに関する能力を見極め、 課題の選定および実施期間の確定を行う。
(本支援による旅費を用いて連携大学を訪問し、具体的な装置やプログラムの打ち合わせ)
3月中旬~下旬:
本開発計画のまとめ、および次年度以降の本格実施の準備、次年度のプロジェクトテーマの選定、などを行う。


平成21年度以降の継続計画

 平成21年度以降は、国際プロジェクト科目(2単位)として継続的に実施、 特に前年度の優秀学生が次年度には授業の補助などに携わってもらい、授業の円滑な遂行に務める。
また、毎年異なるプロジェクトテーマを出すことにより、新たな学生間協調による工夫の生まれる状況を作り出す。
また、優秀者の表彰を検討する。