安達研究室では,スペクトル利用効率・エネルギー利用効率を向上させるための高度無線通信技術の研究を行っています.

  • 高エネルギー効率な無線通信技術の研究

線通信システムの重要な目標の一つは,省エネルギーで高速な通信を提供することにあります.高速通信は,超多素子アンテナを用いるMassive multiple-input multiple-output (MIMO)と呼ばれる技術やマルチキャリア通信といった高度化物理層技術によって実現できます.一方近年,周波数当たりの伝送速度を表す指標であるスペクトル利用効率と同様に1ビット送るのに必要となるエネルギー消費量を表す指標エネルギー利用効率も重要視されています.
無線通信システムにおけるトラフィック量というものは,人の活動時間や場所によって大きく変動します.このようなダイナミクスを考慮することによって,エネルギー利用効率の優れた無線通信システムを構築することが可能となります

  • 無線通信システムへの機械学習の適用に関する研究

現在の無線通信システムでは,基地局や制御局が全ての通信のやりとりを制御する集中型となっています.例えば,無線基地局は近傍の通信エリア内に存在する全ての通信に対してどの周波数を使うのか,どの時間で送受信を行うかなどを割り当てています.しかしながら,モノのインターネット(IoT: Internet-of-Things)時代には,無線通信機能を有する膨大な量の機器が存在することになります.そのような環境では,各無線端末が周辺環境を認知して最適な動作を決定することが重要になってくると考えられます.本研究室では,そのようなゴールを達成するために機械学習を無線通信システムへと取り入れるための検討を行っています.

  • IoTのための低消費エネルギー通信

将来的には,私たちの身の回りにある全てのものが有線・無線によってつながる(モノのインターネット: IoT)と考えられています.無線センサネットワークはIoTの実用例の一つです.無線センサネットワークでは,バッテリ駆動の多数のセンサノードを観測したいエリアに分散配置します.各センサノードは観測結果を情報集約局へと送ることになります.この時,限られたエネルギーを有効に利用する必要が出てきます.本研究室では,IoT端末等の限られたバッテリーを有効に利用する無線通信システムの検討を行なっています.

  • モバイルエッジコンピューティング(MEC)に関する研究

無線端末の高性能化に伴って,拡張現実や画像処理といった膨大な計算能力を必要とするアプリケーションへの需要が高まってきています.しかしながら,無線端末の処理能力には限界がありますし,複雑な計算を行うとバッテリーを消費してしまうため駆動時間が短くなるという問題があります.そこで無線ネットワークの基地局等に計算能力とストレージを有するモバイルエッジコンピューティング(MEC: Mobile Edge Computing)サーバーを配置することが近年注目されています.無線端末はMECへとアプリケーションタスクを無線を用いて送信し,その計算結果を受信します.これにより複雑な処理が必要となるアプリケーションを実行可能となります.しかしながら,複数の無線端末が一斉にMECサーバへとタスクを送信した場合には,無線資源と計算資源に負荷がかかるため期待通りの特性改善効果が得られないという問題が生じます.そこで,本研究室では,複数の無線端末に効率的に無線資源と計算資源を割り当てることでタスク処理にかかる時間を短縮する方法に関する検討を行っています.